The hound of the books & movies (Curious Papers)
2019/09/17
12. Curious Papers (Hen-na Ronbun)
世の中には「変な論文 」が多くある。
それらを紹介しているのが、この ↓ 本である。

著者はお笑い芸人で、すでに「続編」も出ている。
たとえば、この ↓ ような「変な論文」が取り上げられている。

「どうでもいいことにこだわる」のが変な論文である。
たとえば、普通は「あくびはなぜうつるか」という疑問にこだわらないが、ここを徹底的に調べたのが、この ↓ 論文である。

しかし、このどうでもいいことこそ「奥深い」のである。
たとえば、この研究では「4歳まではあくびはうつらない」といった面白い研究結果が報告されている。


そして、「あくびがうつる原因」は「共感性」であるという仮説が出されている。
(興味がある人は、ぜひ、この本を読んでみてほしい。)
個人的に興味があるのは、やはり言語に関係するこの論文である。

この論文では「なぞかけ」の面白さがどこからきているかを研究している。
(なお、なぞかけで有名なお笑い芸人の「ねづっち」についてはThe sign of the language (Q5) を参照)

この論文のウリは「おもしろさ」という感覚的なものを、よりつっこんで具体的に分析しているところにある。
そして、「意外性」だけでなく、「理解できるスピード」も大事になるという指摘が面白い。

よって、今回の仮説はこれ ↓ だ。

この「なぞかけ」論文に興味がある方は、こちら ↓
https://drive.google.com/file/d/1ubozhGpX3CRnT95j1amMX7xQcuHsqG-L/view?usp=sharing
ちなみに、『変な論文』のクリアーファイルも使っている今日この頃である。

(to be continued)
****補足:「隠喩」について ****
以前、共著で次のような本を出した。

この本の目的の1つに、言語学に関する「研究ネタ」を紹介するというのがある。

たとえば、このようなテーマを扱っている。

上の目次にあるように、今回のなぞかけにも関係する比喩(メタファー)もテーマとなっている。

確かに、怒りは爆弾のように「爆発するもの」に譬えられる。
一方、「悲しみが爆発する」という言い方はしないことから、「悲しみ」は「爆発するもの」に譬えられない。
なぜだろうか?
その理由を認知文法では、以下のように「説明」をしている。

つまり、「怒り」を感じたときの身体反応(顔が赤くなる等)が、容器に入れた液体が沸騰するのに似ているため、怒りは「爆発するもの」という比喩で表される。
一方、悲しみはそのような比喩とは合わないため、「爆発する」とは言えないことになる。

この問題は面白い。
ここでいう「面白い」とは、さらに深く追求できるという意味である。
ここでは、さらなるテーマを2つあげておく。
① 喜びも爆発するのはなぜか?
「怒り」だけでなく、「喜び」も「爆発するもの」に譬えられる。
例: 試合に勝って、喜びが爆発した。

しかし、楽しみが爆発したとは言えないことから、喜怒哀楽の中で「怒り」と「喜び」だけが「爆発」の比喩が可能である。
これはなぜだろうか?
ちなみに、英語でもjoy (喜び)に対してexplode (爆発する)が使われる。
... It is Marion! Wallace Marion! Is... is it you? Joy explodes on his face, and he runs to her
② 「怒り」に対して、日本語と英語でどのような比喩が使われるのか?

Let off steam (蒸気を出す)が「怒り」に結びつくのは、この ↓ ようにイメージできる。
怒り=熱量が上がる=湯気的なもの(蒸気など)が出る

しかし、get hernia (ヘルニアを起こす)やhave a cow (牛を生む)などがどうして「怒り」と結びつくかはイメージできない。
She had a cow when I said I was going to buy a motorbike.

慣用句的なので、歴史的な成り立ちがあるだろうが、ヘルニア(hernia)や牛 (cow) を 「怒り」に結び付けているところが面白い。
このように、いろんな言語で「怒り」がどう表現されているかを比較することで、人間の思考に迫れる可能性がある。
世の中には「変な論文 」が多くある。
それらを紹介しているのが、この ↓ 本である。

著者はお笑い芸人で、すでに「続編」も出ている。
たとえば、この ↓ ような「変な論文」が取り上げられている。

「どうでもいいことにこだわる」のが変な論文である。
たとえば、普通は「あくびはなぜうつるか」という疑問にこだわらないが、ここを徹底的に調べたのが、この ↓ 論文である。

しかし、このどうでもいいことこそ「奥深い」のである。
たとえば、この研究では「4歳まではあくびはうつらない」といった面白い研究結果が報告されている。


そして、「あくびがうつる原因」は「共感性」であるという仮説が出されている。
(興味がある人は、ぜひ、この本を読んでみてほしい。)
個人的に興味があるのは、やはり言語に関係するこの論文である。
この論文では「なぞかけ」の面白さがどこからきているかを研究している。
(なお、なぞかけで有名なお笑い芸人の「ねづっち」についてはThe sign of the language (Q5) を参照)
この論文のウリは「おもしろさ」という感覚的なものを、よりつっこんで具体的に分析しているところにある。
そして、「意外性」だけでなく、「理解できるスピード」も大事になるという指摘が面白い。

よって、今回の仮説はこれ ↓ だ。
この「なぞかけ」論文に興味がある方は、こちら ↓
https://drive.google.com/file/d/1ubozhGpX3CRnT95j1amMX7xQcuHsqG-L/view?usp=sharing
ちなみに、『変な論文』のクリアーファイルも使っている今日この頃である。

(to be continued)
****補足:「隠喩」について ****
以前、共著で次のような本を出した。

この本の目的の1つに、言語学に関する「研究ネタ」を紹介するというのがある。
たとえば、このようなテーマを扱っている。

上の目次にあるように、今回のなぞかけにも関係する比喩(メタファー)もテーマとなっている。

確かに、怒りは爆弾のように「爆発するもの」に譬えられる。
一方、「悲しみが爆発する」という言い方はしないことから、「悲しみ」は「爆発するもの」に譬えられない。
なぜだろうか?
その理由を認知文法では、以下のように「説明」をしている。
つまり、「怒り」を感じたときの身体反応(顔が赤くなる等)が、容器に入れた液体が沸騰するのに似ているため、怒りは「爆発するもの」という比喩で表される。
一方、悲しみはそのような比喩とは合わないため、「爆発する」とは言えないことになる。
この問題は面白い。
ここでいう「面白い」とは、さらに深く追求できるという意味である。
ここでは、さらなるテーマを2つあげておく。
① 喜びも爆発するのはなぜか?
「怒り」だけでなく、「喜び」も「爆発するもの」に譬えられる。
例: 試合に勝って、喜びが爆発した。
しかし、楽しみが爆発したとは言えないことから、喜怒哀楽の中で「怒り」と「喜び」だけが「爆発」の比喩が可能である。
これはなぜだろうか?
ちなみに、英語でもjoy (喜び)に対してexplode (爆発する)が使われる。
... It is Marion! Wallace Marion! Is... is it you? Joy explodes on his face, and he runs to her
② 「怒り」に対して、日本語と英語でどのような比喩が使われるのか?

Let off steam (蒸気を出す)が「怒り」に結びつくのは、この ↓ ようにイメージできる。
怒り=熱量が上がる=湯気的なもの(蒸気など)が出る
しかし、get hernia (ヘルニアを起こす)やhave a cow (牛を生む)などがどうして「怒り」と結びつくかはイメージできない。
She had a cow when I said I was going to buy a motorbike.
慣用句的なので、歴史的な成り立ちがあるだろうが、ヘルニア(hernia)や牛 (cow) を 「怒り」に結び付けているところが面白い。
このように、いろんな言語で「怒り」がどう表現されているかを比較することで、人間の思考に迫れる可能性がある。
この記事へのコメント
初めてコメントします。
この前TEDトークで笑いに関する内容を見ていた時に似たような話がありました。ある調査で様々な年齢層に「本物の笑い」と「愛想笑い」を聞かせて区別できるか、どれほど一緒に笑いたくなったかということを聞いたところ、6歳ごろは区別はそこまでつかないものの、一緒に笑いたくなるという感覚は他の年齢層より高かったという結果が出たようです。これもあくびと同じように音を聞いて共感できるという部分で似ていると感じました。
ちなみにその時に見ていたTEDトークはこれです。
(https://www.ted.com/talks/sophie_scott_why_we_laugh#t-673459)
言語の獲得などに関してもそうですが、4〜6歳ごろはかなり大きな転換期、成長期のような時期なのでしょうか。
とても興味深いです。
追伸
またいつかN館のベーカーストリートに遊びに行きたいです・・・
京都と長野はかなりの距離があります・・・
Posted by なかじ at 2019年09月20日 16:37
おー、なかじ君!京都の地で頑張ってるようで、何よりです。貴重な情報、ありがとうございます。
TED見ました。笑いの研究、面白いね。
ご指摘の通り、4~6歳ごろって何かあるよね。言語獲得に関しても、「臨界期」のような仮説もあるし、非常に興味深いですね。いずれ、母語習得や第二言語習得も取り上げます。
いやぁ、なかじ君や七重澤さんたちとピンカーの論文を読んでいたころが懐かしいです。
是非、またN館のベーカーストリートに遊びに来てください!また気楽にコメントや情報くださいね。
Posted by スケロック・ホームズ
at 2019年09月21日 15:20
懐かしさあいまってコメントします。スケロック先生もなかじ君も、お元気そうでなによりです。
先日息子の幼稚園の運動会にて。「勝ったのは赤組さんです!」年中&年長「いぇーい!」年少「…しーーん」
笑い=意外性&理解のスピード に通ずるものがあるような。(年少さんは、なんのこっちゃ、理解してません笑)年少さんは、アクビはうつらないのかもしれないですね!
Posted by 七重澤 at 2019年10月02日 21:00
七重澤さん、コメントどうもです!面白いですね。年少さんにはあくびはうつらないか今後も観察してみてください(笑)。
ほかにも貴重な情報をメールでもらったりしていて感謝しています。言語学的に子どもを観察できる人は少ないので、素敵ですね。
是非、またN館のベーカーストリートに気楽に遊びに来てください!
Posted by スケロック・ホームズ
at 2019年10月03日 09:51