2021/11/18
私の研究室はN館(通称) のベーカーストリート(自称)の230Bであるが、この近くになぞの「赤レンガ倉庫」がある。

この赤レンガ倉庫では、年に1回、不定期に「夜会」が行われている。
その夜会の名は「赤レンガ連盟」。
赤レンガ連盟では「言語の研究発表」をしているが、告知もなく招待された者だけが参加できる。
この章では、赤レンガ連盟で行われた研究発表を紹介していく。
1. Meaning category
今回は、Tsuzuku (2019)のMeaning category (意味カテゴリー) の研究(別名「みんなの卒論」) をとりあげる。
この研究では、英語と日本語の単語の意味のズレを扱っている。
たとえば、必ずしも「drink=飲む」は成り立たたない。

このような意味の違いは、学校でも教わることはほとんどない。
そもそも、日本人の英語学習者はこのような意味の違いを意識しているのだろうか?

もし、英語学習者が状況に応じて英単語を使い分けているなら、どのような基準で使い分けているのだろうか?
たとえば、highとtallの使い分けについてみてみよう。

ここにあるように、highは上のほうを見て「高い」という場合に使われ、tallは全体を見て「高い」という場合に使われる。
そのため、「高いビルが太陽の光を遮っている」という状況は、全体をみるtallが使われる。

highとtallを適切に使い分けるには、このようなネイティブがもつ基準を知っていないといけないことになる。
しかし、日本人の英語学習者はネイティブと同じ基準をもつことは可能なのだろうか?
Tsuzuku (2019)の研究は、まさにこの問題をとりあげ、実験を行っている。
ここでは、wearの実験を見てみよう。
次の例文で、適切な動詞はどれだろうか?(本来のテストは9問ある)

このテストは「wearがどこまで使えるか」がわかっているかを調べるものである。

実は、上の図のすべてにwearが使える。
このテストを英語科の学生に行なった結果を以下に示す。

この結果が示すように、perfume (香水)やringなどのアクセサリーに対してwearを使わないと判断した学生がいることがわかる。


Tsuzuku (2019)では、このようなテストを複数の語に対して行い、以下の結論を示している。


以上がTsuzuku (2019)の研究の概要である。

≪コメント≫
1.ネイティブが「無意識に知っている」基準を正確に知ることは可能なのか?実際、ネイティブでも明確に説明できないという指摘もある。(『くよくわかるメタファー』 瀬戸賢一 著より)

2.日本人学習は「ネイティブとは違う基準をもつ」という指摘は「中間言語仮説」と同じものであり、興味深い。(『日本語を教えるための第二言語習得論入門』 大関浩美 著より)

「赤レンガ連盟」の研究については、今後も不定期に紹介していく。

***** <補足コメント: オリジナリティー>****
論文には「オリジナリティー(独創性)」が求められる。
でも、オリジナリティーなど、そう簡単に出せるものではない。
まずは、過去の研究を最大限に活かす「クリエイティビティ―(創造性)」が大事になる。
(『理系的アタマの使い方』 鎌田浩毅 著より)

なお、バラバラの「点」である知識につながりをつけることでアイデアは生まれる。
この点については、こちら ↓ の資料を参照
https://tanaka0871.naganoblog.jp/e2466406.html

この赤レンガ倉庫では、年に1回、不定期に「夜会」が行われている。
その夜会の名は「赤レンガ連盟」。
赤レンガ連盟では「言語の研究発表」をしているが、告知もなく招待された者だけが参加できる。
この章では、赤レンガ連盟で行われた研究発表を紹介していく。
1. Meaning category
今回は、Tsuzuku (2019)のMeaning category (意味カテゴリー) の研究(別名「みんなの卒論」) をとりあげる。
この研究では、英語と日本語の単語の意味のズレを扱っている。
たとえば、必ずしも「drink=飲む」は成り立たたない。

このような意味の違いは、学校でも教わることはほとんどない。
そもそも、日本人の英語学習者はこのような意味の違いを意識しているのだろうか?

もし、英語学習者が状況に応じて英単語を使い分けているなら、どのような基準で使い分けているのだろうか?
たとえば、highとtallの使い分けについてみてみよう。

ここにあるように、highは上のほうを見て「高い」という場合に使われ、tallは全体を見て「高い」という場合に使われる。
そのため、「高いビルが太陽の光を遮っている」という状況は、全体をみるtallが使われる。

highとtallを適切に使い分けるには、このようなネイティブがもつ基準を知っていないといけないことになる。
しかし、日本人の英語学習者はネイティブと同じ基準をもつことは可能なのだろうか?
Tsuzuku (2019)の研究は、まさにこの問題をとりあげ、実験を行っている。
ここでは、wearの実験を見てみよう。
次の例文で、適切な動詞はどれだろうか?(本来のテストは9問ある)

このテストは「wearがどこまで使えるか」がわかっているかを調べるものである。

実は、上の図のすべてにwearが使える。
このテストを英語科の学生に行なった結果を以下に示す。

この結果が示すように、perfume (香水)やringなどのアクセサリーに対してwearを使わないと判断した学生がいることがわかる。


Tsuzuku (2019)では、このようなテストを複数の語に対して行い、以下の結論を示している。


以上がTsuzuku (2019)の研究の概要である。

≪コメント≫
1.ネイティブが「無意識に知っている」基準を正確に知ることは可能なのか?実際、ネイティブでも明確に説明できないという指摘もある。(『くよくわかるメタファー』 瀬戸賢一 著より)

2.日本人学習は「ネイティブとは違う基準をもつ」という指摘は「中間言語仮説」と同じものであり、興味深い。(『日本語を教えるための第二言語習得論入門』 大関浩美 著より)

「赤レンガ連盟」の研究については、今後も不定期に紹介していく。

***** <補足コメント: オリジナリティー>****
論文には「オリジナリティー(独創性)」が求められる。
でも、オリジナリティーなど、そう簡単に出せるものではない。
まずは、過去の研究を最大限に活かす「クリエイティビティ―(創造性)」が大事になる。
(『理系的アタマの使い方』 鎌田浩毅 著より)

なお、バラバラの「点」である知識につながりをつけることでアイデアは生まれる。
この点については、こちら ↓ の資料を参照
https://tanaka0871.naganoblog.jp/e2466406.html