The valley of ear (ch. 10)

<リエゾン:子音(子ども)は母音(母親)を求める>

・英語の場合は子音で終わる単語が多いため、つぎの単語が母音で始まる単語だと、くっついて発音される。
( 母音: 「あ(a)、い(i)、う(u)、え(e)、お(o)」/子音:それ以外)

The valley of ear (ch. 10)


10. Eric Clapton (Swing Low Sweet Chariot)

日本語は必ず母音で終わるのが特徴である (* 唯一の例外は「ん (n)」である)。

このことは、日本語の50音図をみるとよく分かる。

The valley of ear (ch. 10)


とくに、「日本語には子音だけを表す文字がない」ことが分かるだろう。

どの文字も、「子音+母音」で1文字になっている。

The valley of ear (ch. 10)

このように、「日本語には子音だけを表す文字がない」ということは、日本語の基本単位は「子音+母音」であることの何よりの証拠である。

これに対して、英語には子音だけを表す文字がある (例: m, t, ,s, vなど)。
この場合、「子音のみの発音」になるが、日本人は無意識に母音を入れて発音してしまう

The valley of ear (ch. 10)

そのため、子音で終わる英語の発音をするためには、「かわいい子に旅をさせる」必要がある。

The valley of ear (ch. 10)

The valley of ear (ch. 10)


そもそも、「母音」と「子音」の違いは何かというと、両者は音の出し方が異なる。

実際に発音してみれば分かるが、「a, i, u, e, o」の母音は口の形が違うだけで、どの母音も息がスッと出てくる
これは、口の中の「どこも塞いでいない」からである。

たとえば、「a」の口は次のようになる。

The valley of ear (ch. 10)


比較的、口をすぼめて小さくする「u」でも、息が出る際に口の中が塞がれて「妨害」されることはない。

<「u」の発音>
The valley of ear (ch. 10)


これに対して、口のどこかを塞いで出すのが子音である。

たとえば、[b]の場合、唇を閉じてから息を吐き出す。

The valley of ear (ch. 10)

また、[t] の場合は上の前歯の後ろを舌で塞いでから息を吐き出す。

<「t」の発音>
The valley of ear (ch. 10)

つまり、母音は息をすんなり出すため聞き取りやすいが、子音は息が出るのを妨害するため聞き取りにくいという特徴がある。

The valley of ear (ch. 10)

英語で子音が連続する場合や子音で終わる場合には子音が脱落する場合がある。
これをリダクションというが、これは子音が聞き取りにくいために起こる現象といえる。
(リダクションについては、The valley of ear (ch. 3) も参照)

The valley of ear (ch. 10)


さらに、英語には日本語にない音の出し方をする子音が多くある

その1つが [ l ] である。
英語の[ l ]は日本語の「ラ行」と違って、舌先を上の歯茎にしっかりと押し当てる。

The valley of ear (ch. 10)

実際に舌先を上の歯茎にしっかりと押し当てて発音してみれば分かるが、[ l ]自体は「ウ」(もしくは「オ」)に近い音になる。
そのため、[ l ]の後に母音が続かない場合は「ウ」に近い音になる。
この[ l ]は「ダークL」とよばれ、とくにlで終わる場合の発音がそうなる。

The valley of ear (ch. 10)


そのため、このような「空耳」が可能になる (Eric ClaptonのSwing Low Sweet Chariotより)。

The valley of ear (ch. 10)

ここでは、angelsの[l] の発音に注目する。

The valley of ear (ch. 10)

・~of はつながる:
The valley of ear (ch. 10)

・「a」の発音は「エ」に近いæ
The valley of ear (ch. 10)


実際に確かめてみたい人はこちら ↓

https://www.amazon.co.jp/clouddrive/share/Xmr11hlcnrAZZogFSW44ylDJdIe35YVQinAgIvbriEr

≪補足映像資料≫
1.日本語が英語に聞こえるという「逆空耳」(ミスチルの「シーソーゲーム」)。
The valley of ear (ch. 10)

ここでのポイントは日本語の「ふ」の音が聞こえにくいということ。
実際、日本語の「ふ」にくらべ、英語の [f] は上の歯で唇を塞いで強く出すため、音がはっきりしている。

<「f」の発音>
The valley of ear (ch. 10)

そのため、アメリカ人やイギリス人は日本語の「ふ」を聞き取れないことがある

The valley of ear (ch. 10)

2.空耳サークル初採用作品 (Rhapsodyの「Dawn of Victory」)
*最後のsmellは「ダークL」で終わっているため、よく聞くと「すべる」というよりも「すべう」に聞こえる。

言語が違うと使われる音も違う。この点は興味深いテーマであるため、改めて取り上げることにする。


(to be continued)


**** <補足コメント> ****

空耳サークルで本家(「タモリ倶楽部」)に採用された記念すべき第1号は、たっくん(初代部長)のこの作品である。

The valley of ear (ch. 10)

実際の映像は上で紹介したサイトで聞けるので、ぜひ、聞いてみてほしい。

同じカテゴリー(音の研究)の記事画像
The valley of ear (ch. 22)
The valley of ear (ch. 21)
The valley of ear (ch. 20)
The valley of ear (ch. 19)
The valley of ear (ch. 18)
The valley of ear (ch. 17)
同じカテゴリー(音の研究)の記事
 The valley of ear (ch. 22) (2022-01-17 12:25)
 The valley of ear (ch. 21) (2021-01-24 17:23)
 The valley of ear (ch. 20) (2020-08-05 19:05)
 The valley of ear (ch. 19) (2020-03-11 12:47)
 The valley of ear (ch. 18) (2019-12-27 17:02)
 The valley of ear (ch. 17) (2019-11-25 20:07)
< 2024年05月 >
S M T W T F S
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
カテゴリ
QRコード
QRCODE
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8

アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 7人
プロフィール
スケロック・ホームズ
スケロック・ホームズ
コンサルタント言語探偵 (自称)

我々が言葉を用いるときに、暗黙のうちに、何らかの規則に従っていることは明らかである。しかし、一体どんな規則に従っているのであろうか?たとえば、
「人の悪口は言わない!」の「人」は「他人」のことである(=「他人」の悪口は言わない!)
「人の悪口を言うな!」の「人」は「自分」のことを指せる(=「俺」の悪口を言うな!)

なぜ、「人」が「他人」も「自分」も指せるのかを説明することは難しいが、日本人ならいとも簡単に使える。

規則をはっきり意識できない、説明できないのに使える。

ここに「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」が存在する。

言語は面白い。そのなぞ解きはさらに面白い。

The only promise a puzzle makes is an answer.

誰に頼まれることがなくても、言語の謎を解明し続けるが、依頼はいつでも受け付けている。

There's nothing more hazardous to my health than boredom.