The valley of ear (ch. 20)

<母音の三角形と母音変化>

The valley of ear (ch. 20)

(母音の三角形および母音変化については、The valley of ear (ch. 9) および (ch. 12) を参照)


20. System Of A Down (B.Y.O.B.)

英語は発音と綴りが一致しないことで「悪名高い」言語である。

たとえば、[i] (イ)と発音する綴りは11もある
(英語の発音と綴りについては、The valley of ear (ch. 15) を参照)

≪ [i] (イ)と発音する綴り ≫
The valley of ear (ch. 20)

このような綴りと発音のズレの大きな原因の1つに 「大母音推移 (Great Vowel Shift)」があげられる。

大母音推移とは、簡単にいうと、200~300年くらいかけて母音が1つずつ上の音に変わっていった現象である。
(『英語のルーツ』唐澤一友 著 より)

The valley of ear (ch. 20)

たとえば、上の図にあるように、一番下にある[a] (ア)は1つの上の[e](エ)に変わり、[e](エ)は1つ上の[i] (イ)に変わるといった変化である。

たとえるなら、順番待ちの席をつめていく感じである。
(なお、上の図にあるように、一番上にある[i] (イ) は [ai] (アイ)に、[u] (ウ)は[u] (アウ)に変わる)

The valley of ear (ch. 20)

具体例として「[e](エ) → [i] (イ)」の変化と「[o] (オ) → [u] (ウ)」の変化見ていこう。

(i) 「[e](エ) → [i] (イ)」 の変化

この変化を起こした単語として、先ほどあげた eおよびee の綴りをもつ単語がある。

The valley of ear (ch. 20)

The valley of ear (ch. 20)

例えば、need はもともと「ネェード」であったが、大母音推移の影響で[e](エ)が1つ上の[i] (イ)に変わったために、「ニィード」という今の発音になっている。

このように、eおよびeeはもともとは綴り通り[e](エ)と発音されていたが、大母音推移の影響で1つ上の[i] (イ)に変わったため、今では「イー」と発音されている。

(ii) 「[o] (オ) → [u] (ウ)」 の変化

この変化を起こした単語として、oo の綴りをもつ単語があげられる。
(『英語の不思議再発見』佐久間治 著 より)

The valley of ear (ch. 20)

The valley of ear (ch. 20)

例えば、moon はもともと「モォーン」であったが、大母音推移の影響で[o] (オ)が1つ上の[u] (ウ)に変わったために、「ムゥーン」という今の発音になっている。

このように、ooはもともとは綴り通り[o] (オ)と発音されていたが、大母音推移の影響で「オ」が1つ上の[u] (ウ)に変わったため、今では「ウー」と発音されている。

さらに、ooの綴りの中にはわずかであるが、「ウー」と伸ばさないで「ウ」になったものもある

The valley of ear (ch. 20)

このような単語は、大学入試4500語を基準にすると以下のように数が限られている。

The valley of ear (ch. 20)


今回は、大母音推移の影響を受けているooの発音が使われている空耳を取り上げる (System Of A Down のB.Y.O.B.)。

The valley of ear (ch. 20)

ここでは、最後のsend the poorの発音に注目してほしい。

poorのooは大母音推移の影響で「ポォ」ではなく「プゥ」と発音されるがことが多いが、場合によってはooの綴り通り「ポォ―」とも発音される。

実際、辞書によってはpoorに対して[u] (ウ)バージョンの発音と[o] (オ)バージョンの発音の両方が載っている
(『ウィズダム英和辞典 第3版』より)

The valley of ear (ch. 20)

このことからも、母音の区別は曖昧であり、大母音推移のような変化はそれほど「特別」なことではないともいえるだろう。

実際に確かめてみたい人はこちら ↓

https://drive.google.com/file/d/1ZQYhuSnzRud3Sp9Yogriw_kerBnonz4q/view?usp=sharing


≪補足映像資料≫

1. 同じく、大母音推移の影響を受けているeeの発音が使われている本家の空耳作品 (Megadethの「Almost Honest」) 。

The valley of ear (ch. 20)

bleedのee が[e](エ)ではなく[i] (イ)であるために起こる空耳である。


大母音推移は英語史最大の謎とも言われている。
(『英語史で解きほぐす英語の誤解』堀田隆一 著 より)

The valley of ear (ch. 20)

このテーマについては、さらに追及していこう。


(to be continued)

**** <補足コメント> ****

空耳サークルの伝説の元副部長JJ福井 (部長でもないのに伝説)からいきなり次のようなメールが送られてきた。

The valley of ear (ch. 20)

どうやら、「英単語-K」で人名をつくるという謎の遊びである。

よっぽど暇なんだろう。

これに対抗し、自分も渾身の作品?を送ったところ、JJ福井から謎の返信が来た。

The valley of ear (ch. 20)

両者ともに、よっぽど暇なことだけは確かだ。
そして、この「暇さ」こそが「空耳サークル」が成り立つ原動力なのである。

ちなみに、JJ福井は未だにガラケー (Gara-K)である。

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我々が言葉を用いるときに、暗黙のうちに、何らかの規則に従っていることは明らかである。しかし、一体どんな規則に従っているのであろうか?たとえば、
「人の悪口は言わない!」の「人」は「他人」のことである(=「他人」の悪口は言わない!)
「人の悪口を言うな!」の「人」は「自分」のことを指せる(=「俺」の悪口を言うな!)

なぜ、「人」が「他人」も「自分」も指せるのかを説明することは難しいが、日本人ならいとも簡単に使える。

規則をはっきり意識できない、説明できないのに使える。

ここに「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」が存在する。

言語は面白い。そのなぞ解きはさらに面白い。

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