The red-brick league (case 2)

今年もあの「赤レンガ連盟」の夜会が開かれた。

コロナの影響もあり、「赤レンガ倉庫」からのオンライン配信であった。

The red-brick league  (case 2)

告知もなく不定期に開催され、招待された者だけが参加できる謎の夜会。
今年の「言語の研究発表」から、英文法に関する研究を紹介しよう。


2. Frequently used English grammar

今回とりあげるのは、Takizawa (2022)のFrequently used English grammar (頻出英文法) の研究(別名「出る順 文法」)である。

この研究では、大学受験の「共通テスト」の分析を通して、reading試験に必要な英文法を分析している。

The red-brick league  (case 2)

受験英語に関しては、いわゆる『出る単』(出る順 単語)や『出る順 熟語』などはあるが、『出る順 英文法』はない。
このありそうでない『出る文(英文法)』に目をつけたのが、今回の研究である。

The red-brick league  (case 2)

先行研究として、金谷(編著) (2015)の調査結果を紹介している。
(『中学英文法で大学英語入試は8割解ける!』 金谷憲 編著より)

The red-brick league  (case 2)

簡潔いうと、「中学校の英文法で大学入試の8割は解ける」というものである。

ただし、この金谷(編著) (2015)は共通テスト以前の試験分析である。

そのため、Takizawa (2022)は新たに導入された2年分の「共通テスト」を分析し、頻出英文法を調べている。
結論からいうと、共通テストでも全体的に中学校の英文法が使われている

時制を例にとって見てみよう。

まず、中学校英語でお馴染みの現在進行形と現在完了形は、共通テストでもよく使われている

The red-brick league  (case 2)

一方、中学校では(ほとんど)出てこない過去完了進行形、未来完了(進行)形は、共通テストにも使われていない

The red-brick league  (case 2)

Takizawa (2022)では、文法項目だけでなく、それがどのような意味・用法で使われることが多いかについても調査している。

たとえば、現在進行形の場合、「一時的動作」の意味で使われることが圧倒的に多い
もう一度、関連部分だけ取り上げてみよう。

The red-brick league  (case 2)

つまり、文法書などに載っている「終わりに向かっている(完結する瞬間への接近)」や「近未来」の用法は、共通テストではほとんど使われていない。(『わかるから使えるへ 表現英文法』 田中茂範 著より)

The red-brick league  (case 2)

ただし、どちらとも解釈できる場合もあり、その場合は「ダブルカウント」となる。
たとえば、次の文は共通テストからとったものであるが「一時的動作」とも「近未来」ともとれる

The red-brick league  (case 2)


Takizawa (2022)の最終的な分析結果を示すと、以下のようになる。


The red-brick league  (case 2)

この結果に基づき、以下の提案がなされている

The red-brick league  (case 2)
The red-brick league  (case 2)

以上がTakizawa (2022)の研究の概要である。


≪コメント≫

1.定着問題
「高校1年生では中学校の英文法を徹底的にやる」との提案は、いかに文法を「定着」させるかという問題と関係してくる。(金谷(編著) (2015)より)

The red-brick league  (case 2)

・文法に時間を費やすことは、英語学習のモティベーションを下げてしまわないのだろうか?
・数学の説明と英文法の説明は同じように扱えるのだろうか?
・英文法をしっかり理解させるためには、どのように説明したらいいのだろうか?

2.スピード問題
文法を知っているだけでは不十分で、「ある程度のスピードで理解できる」ことが重要という指摘もある。(『英語教育』 2022年2月号より)

The red-brick league  (case 2)

今回の研究でも、「テストで使える英文法」という観点から、「長文の流れのまま英文を理解できる文法力」を想定している。

「ある程度のスピードで処理できる文法力」というテーマも興味深い。

「赤レンガ連盟」の研究については、今後も不定期に紹介していく。

The red-brick league  (case 2)


***** <補足コメント: オリジナリティー 2>****

研究においては、過去の研究を自分なりに分かりやすく要約してみることが大事になる。
(『理系的アタマの使い方』 鎌田浩毅 著より)

The red-brick league  (case 2)

「オリジナリティー(独創性)」は「クリエイティビティ―(創造性)」の積み重ねの先に現れるともいえる。

そのため、調べた情報をもとに自分の考えをまとめ言語化することが重要となる。

この点については、こちら ↓ の資料を参照

https://note.com/yuusyoo174/n/neea9076eb40c?magazine_key=m22121398c876


同じカテゴリー(research)の記事画像
The red-brick league  (case 1)
同じカテゴリー(research)の記事
 The red-brick league (case 1) (2021-11-18 12:46)
< 2024年05月 >
S M T W T F S
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
カテゴリ
QRコード
QRCODE
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8

アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 7人
プロフィール
スケロック・ホームズ
スケロック・ホームズ
コンサルタント言語探偵 (自称)

我々が言葉を用いるときに、暗黙のうちに、何らかの規則に従っていることは明らかである。しかし、一体どんな規則に従っているのであろうか?たとえば、
「人の悪口は言わない!」の「人」は「他人」のことである(=「他人」の悪口は言わない!)
「人の悪口を言うな!」の「人」は「自分」のことを指せる(=「俺」の悪口を言うな!)

なぜ、「人」が「他人」も「自分」も指せるのかを説明することは難しいが、日本人ならいとも簡単に使える。

規則をはっきり意識できない、説明できないのに使える。

ここに「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」が存在する。

言語は面白い。そのなぞ解きはさらに面白い。

The only promise a puzzle makes is an answer.

誰に頼まれることがなくても、言語の謎を解明し続けるが、依頼はいつでも受け付けている。

There's nothing more hazardous to my health than boredom.