9. Deviation from the norm

「勝負時計」を買った。



今、ネイティブ英文法シリーズの「英文の基本構造」の原稿を書いている。
(ネイティブ英文法シリーズについては、The adventures of Sukelock Holmes (Native English Grammar)を参照)

締め切りが今月末ということもあり、仮眠を取りながらの作業を続けているため、上の「勝負時計」は非常に役に立つ。
なんといっても、3分と5分のカウントダウン・アラーム付きなのである。



あのリヴァイ兵長とエレンの声で時間を知らせてくれるため、必ず目が覚める。

しかも、3分と5分という組み合わせはカップラーメンにも最適だ。



今回の「英文の基本構造」というテーマには苦戦している。

原稿のチェックも「巨人との戦い」ばりに激しい。




本を出すというのは、大人たちのガチンコ勝負なんだと改めて思い知らされている。





カッコよくまとめたが、要は「番宣(本の宣伝)」であった・・・
(全5巻シリーズの編集幹事をしているので、宣伝させて!)


****「破格構文:規範からの逸脱」 ****

ネイティブ英文法シリーズはすでに2巻出ているが、そのうちの1つが「破格の構造」である。



「破格」とは正しいとされている規範(ルール)に違反していることを表す。



つまり、学校などでは「正しくない」とされている文が、実際にはネイティブによく使われている。

たとえば、文の最後にnotをおいて、「んなわけないか」的な言い方をしたりする



ここでのポイントは「テレビのコメディー番組で使い始めたのが広がった」という点である。

言葉の文法やルールは政府や役人が決めたものではない。
多くの人が使うことで自然発生的に定着したものである。

いいかえれば、新しいルールが広まって定着する可能性もあるということである。
上のnotの使い方もまさにそのような例である。

そもそも、言葉はどう使おうが自由である。

たとえば、標準語と関西弁で違う単語が使われる



この点に関して、ペンネーム「セクシー明太子」さんたちから、岩手県の言い方も教えてもらった。



このように、言葉は自由である。

しかし、一方でみんなが好き勝手に言葉を使ってしまうと、「どういう意味?」となり、コミュニケーションが成り立たなくなってしまう。

上の関西弁も関西の地域では共通理解されている言葉である。

コミュニケーションのためには共通理解が欠かせない。
しかし、言葉は自然発生的につくられるため変化もする。

では、言葉に規範(正しい言い方)などあると言えるのだろうか?

この規範問題については、また改めて取り上げることにする。
(規範問題については、The case study of Sukelock Holmes (ch. 11)も参照)

なお、「破格の構文」の内容紹介が、こちら ↓ の出版社のサイトに載っている。

https://twitter.com/i/events/1186814747326287872

規範問題を考える上で参考になるだろう。


ちなみに、勝負時計の朝のアラームも強烈である。

≪赤:エレンの声、緑:リバイ兵長の声≫


どのパターンでくるか分からないところがスリリングである。
とくに、リバイ兵長から「すべてやり直せ」と言われると、一瞬で目が覚める今日この頃である。




前回 (The sign of the language (Q9))の Quiz2 (ワード・スクエア (Word Square))の答え。




10. Double negation

次の文はどういう意味か?




2つの否定語を使う二重否定 (double negation)は、論理的には否定を打ち消すので肯定になる。

否定+否定=肯定 (「ない」ことは「ない」=「ある」)




しかし、言語は論理だけで割り切れるものではない。

方言や話し言葉では、二重否定は否定を強める際に用いられている

実際、映画や音楽などではこの用法がよく見られる。
たとえば、ローリング・ストーンズの有名な曲である I Can’t Get No Satisfaction は二重否定が使われているが、「ぜんぜん満足できない」という強い否定を表している。





つまり、ネイティブにはこの ↓ ような感覚もあることになる。

否定の繰り返し = 否定の強調

このことは、否定だけに限らない。

肯定を表す語を重ねても、意味を強めることができる。

always and on all occasions (いついかなるときも)

意味的にはalwaysだけでも十分であるが、同じような意味を表す on all occasionsを重ねることで意味を強めている。

さらに、否定文で否定を繰り返す言語も多い

たとえば、イタリア語の否定文は否定語を2つ使う
(『破格の構造 (ネイティブ英文法シリーズ2)』 小林亜希子・吉田智行 著より)



その他にも、ポーランド語もスペイン語も同じように否定語を2つ使って否定文をつくる




英語では非標準でも、世界の言語では標準ということもある。

この点に関連して、今回は日本語の否定文に関する問題を取り上げる。


<Quiz 1>

次の4コマ漫画の最後のおじいちゃんのセリフは肯定と否定のどちらの解釈になるだろうか?
(その理由も考えてみよう!)




<Quiz 2>

ルイス・キャロルの「ダブレット (Doublets)」

これは、同じ長さの単語を1文字だけ変えてつなげていく遊びである。




ということで、今回はこの↓ダブレットに挑戦してみてほしい(『英語ことば遊び事典』より)




*「答え」は後日、「コメント」欄に提示 (次のQuizの冒頭に書く場合もある)


**** <補足コメント>****

今年のお年玉として、子どもに「100万円札」をあげた




100万円札じゃなくない?」とあっさり言われてしまった。

この「なくない?」も否定が2つ使われているが、否定の意味を表している。

言語は数学ではない。
言語独自の論理を追求する必要がある。


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プロフィール
スケロック・ホームズ
スケロック・ホームズ
コンサルタント言語探偵 (自称)

我々が言葉を用いるときに、暗黙のうちに、何らかの規則に従っていることは明らかである。しかし、一体どんな規則に従っているのであろうか?たとえば、
「人の悪口は言わない!」の「人」は「他人」のことである(=「他人」の悪口は言わない!)
「人の悪口を言うな!」の「人」は「自分」のことを指せる(=「俺」の悪口を言うな!)

なぜ、「人」が「他人」も「自分」も指せるのかを説明することは難しいが、日本人ならいとも簡単に使える。

規則をはっきり意識できない、説明できないのに使える。

ここに「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」が存在する。

言語は面白い。そのなぞ解きはさらに面白い。

The only promise a puzzle makes is an answer.

誰に頼まれることがなくても、言語の謎を解明し続けるが、依頼はいつでも受け付けている。

There's nothing more hazardous to my health than boredom.