The hound of the books & movies (Summer Wars)

翻訳の大御所の一人に、柴田元幸さんがいる。

東大の教授であり、村上春樹さんともよく一緒に翻訳をやっている人だ。

The hound of the books & movies (Summer Wars)

柴田さんはneverの訳について、次のように語っている。

The hound of the books & movies (Summer Wars)

neverのように「馴染みのある」語でも適切な日本語訳を当てることは難しい。
ましてや、日本語特有の表現についてはなおさらである。

今回は、日本語特有の表現の英訳についてみていく。


16. Summer Wars

夏の映画といえば、『サマーウォーズ』だろう。

なんといっても上田市が舞台となっている。

The hound of the books & movies (Summer Wars)

この映画は、狂ったネット上の仮想世界から現実世界を守るために、大家族が一丸となって立ち向かうという話である。

どんなハイテクなネットワークよりも、家族という絆は何よりも強力なネットワークであるという強いメッセージが込められている。

The hound of the books & movies (Summer Wars)

個人的には肝っ玉おばあちゃんのセリフが大好きであるが、
今回は、戦いのクライマックスで主人公が叫んだ「よろしくお願いします!」というセリフを取り上げる

The hound of the books & movies (Summer Wars)

まず考えないといけないのは、この「よろしく」というのは日本語特有の表現であるため、英語にしづらいということである。
(『英語にない日本語』フォーンクルック幹治 著 より)

The hound of the books & movies (Summer Wars)


そのため、どうい状況で「よろしく」を使っているかを考える必要がある

今回取り上げた場面では、タイムリミットが迫る中、主人公が超困難な暗号を解読するも、
果たしてそれが合っているのか分からないという状況で、覚悟を決めてパスワードを打ち込むというシーンである。

The hound of the books & movies (Summer Wars)

この場合の「よろしく」はどう訳すといいだろうか?

実は、この映画には英語字幕はついていない。

しかし、私 (自称シャーロック・ホームズ)は「翻訳コンニャク倶楽部」という謎の倶楽部とも精通しており、
そのメンバーは以下のように英訳している。

The hound of the books & movies (Summer Wars)

つまり、やることはやったので、「後は運命に任せる」という発想である。

なかなかの名訳である。

このように、「よろしく」は英語にはない表現であるため、この場面をどう解釈するかによって、いろんな英訳が可能である。

みなさんなら、どう英訳するだろうか?

ちなみに、単語レベルでも日本語特有の表現がある
この場合も、使われる状況を考えて適切な英訳をする必要がある。

例えば、「味のある」という日本語は状況によって英訳が異なる。
(『訳せそうで訳せない日本語』 小松達也 著より)

The hound of the books & movies (Summer Wars)

英訳は奥深い。

今後も「翻訳コンニャク倶楽部」の翻訳作品を紹介していこう。


(to be continued)

*****「補足資料」 ****

「翻訳コンニャク倶楽部」のメンバーは英訳だけでは物足りず、
勝手に『サマーウォーズ』の実写版をつくり、そこに英語字幕を載せている

実際に確かめたい人は、こちら ↓
(2分半ほどのシーンをあげているので、他の英訳もチェックしてほしい。)

https://www.youtube.com/watch?v=QQgEoX_S0a4&t=107s

(*なお、特典映像もつけてあるので、そちらも是非、見てみてほしい。)

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コンサルタント言語探偵 (自称)

我々が言葉を用いるときに、暗黙のうちに、何らかの規則に従っていることは明らかである。しかし、一体どんな規則に従っているのであろうか?たとえば、
「人の悪口は言わない!」の「人」は「他人」のことである(=「他人」の悪口は言わない!)
「人の悪口を言うな!」の「人」は「自分」のことを指せる(=「俺」の悪口を言うな!)

なぜ、「人」が「他人」も「自分」も指せるのかを説明することは難しいが、日本人ならいとも簡単に使える。

規則をはっきり意識できない、説明できないのに使える。

ここに「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」が存在する。

言語は面白い。そのなぞ解きはさらに面白い。

The only promise a puzzle makes is an answer.

誰に頼まれることがなくても、言語の謎を解明し続けるが、依頼はいつでも受け付けている。

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