The valley of ear (ch. 22)

<大母音推移:母音の変化>

The valley of ear (ch. 22)

(大母音推移については、The valley of ear (ch. 20) を参照)


22. Lady GaGa (Paper Gangsta)

英語のアルファベットの読み方には「隠されたルール」がある。

The valley of ear (ch. 22)

とくに、子音の読み方に注目してみよう。
たとえば、bは両唇を閉じて出す音である。
(『英語の発音トレーニングBOOK』 明場由美子 著より)

The valley of ear (ch. 22)

口を閉じるだけなので、b自体では音が出ない
では、なぜbは「ビー」と読まれるのだろうか?
(『最強の英語発音ジム』高山芳樹 著より)

The valley of ear (ch. 22)

その答えは「母音のeをつけている」からである。
つまり、bのままでは発音できないので、母音のeをつけてbe(ビー)と読んでいる

これは、日本語の「ん」がそのままでは発音しづらいので、母音の「う」を入れて「うん」と読むのと同じである。
(『英語の文字・綴り・発音のしくみ』大名 力 著より)

The valley of ear (ch. 22)

英語のアルファベットの子音の場合は、「be」のように 母音のe をつけて発音しているわけである。

しかし、eは後ろにつくパターンだけではなく、前につくパターンもある
たとえば、f だけだと「フ」のような音だが、eが前につくため「エフ」と発音される。

The valley of ear (ch. 22)

では、eが前につくパターンと後ろにつくパターンには何かルールがあるのだろうか?

実は、ここには次のようなルールがある。

The valley of ear (ch. 22)
The valley of ear (ch. 22)

ここで、もう1つの謎がある。
それは、英語はいわゆる「ローマ字」読みをしないということである。

実際、アルファベットをもつ他の言語はローマ字読みをする
ドイツ語と英語のアルファベットの読み方を比較してみよう。

The valley of ear (ch. 22)

これは、英語では大母音推移が起こり、[e](エ)は1つ上の[i] (イ)と発音されるようになったからである。

The valley of ear (ch. 22)

そのため、英語ではB(be)はローマ字読みの「ベー」ではなく「ビー」になるのである。

今回は、大母音推移の影響を受けている「エに近いa」が使われている空耳を取り上げる (Lady GaGa のPaper Gangsta)。

The valley of ear (ch. 22)

ここでは、manの発音に注目してほしい。
manのaは大母音推移の影響で「ア」ではなくエに近い「ェア」と発音される。

The valley of ear (ch. 22)


このようなa が使われている単語は多い。
(『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』池谷 裕二 著より)

The valley of ear (ch. 22)


実際に確かめてみたい人はこちら ↓

https://twitter.com/pb4SdnU18nRwev1/status/1482909092788436994?cxt=HHwWhIDQ3dH9rJQpAAAA

≪補足映像資料≫

日本語が英語に聞こえるという「逆空耳」(B’z の「Ocean」)。

The valley of ear (ch. 22)

B’z の「Ocean」のどの歌詞が上の英語に聞こえるか、実際に確かめてみてほしい。

なお、上の逆空耳英語にあるbeneath のea(エとアの中間の音)が「イ」と発音されるのも、大母音推移の影響である。

The valley of ear (ch. 22)

なお、eがつかない子音のアルファベットの読み方もいくつかある

たとえば、W はもともと英語になかった文字で、Uを2つ使って表していたため、「ダブルU」から「ダブリュー」と読まれている。
(『語源でわかる中学英語』原島広至 著 より)

The valley of ear (ch. 22)

このテーマについては、さらに追及していこう。


(to be continued)

**** <補足コメント> ****

空耳サークルは10周年を迎えた(はず)。
たっくん(初代部長)とタモさんに会いに行ったことは懐かしい思い出である。

The valley of ear (ch. 22)

自分もあの頃は若かった(はず)。
空耳サークルは20周年に向け、部員(および自主製作空耳の役者)を募集中。

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コンサルタント言語探偵 (自称)

我々が言葉を用いるときに、暗黙のうちに、何らかの規則に従っていることは明らかである。しかし、一体どんな規則に従っているのであろうか?たとえば、
「人の悪口は言わない!」の「人」は「他人」のことである(=「他人」の悪口は言わない!)
「人の悪口を言うな!」の「人」は「自分」のことを指せる(=「俺」の悪口を言うな!)

なぜ、「人」が「他人」も「自分」も指せるのかを説明することは難しいが、日本人ならいとも簡単に使える。

規則をはっきり意識できない、説明できないのに使える。

ここに「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」が存在する。

言語は面白い。そのなぞ解きはさらに面白い。

The only promise a puzzle makes is an answer.

誰に頼まれることがなくても、言語の謎を解明し続けるが、依頼はいつでも受け付けている。

There's nothing more hazardous to my health than boredom.