2019/02/22
3. Where is ‘front’?
ロペ問題: なぜ、「手を染める」のに、「足を洗う」のか?
仮説: 手はstartを表し、足はgoalを表す

この「ロペ問題」の考察をさらに続けていたところ、研究室にワトソン君がやってきた。
彼のフルネームは「ルネ・ワトソン」である(エマ・ワトソンではない)。
「スケロック先生、英語では逆ですよ」(少しにやけている)
「というと・・・?」
「「手を染める」を英語で調べてみたら、"get one's feet wet" と出てきました。
つまり、英語では「足(feet)を濡らす」ことが「始まり」を意味します。」 (少しドヤ顔)
「日英で、ある意味「反対」なんだね」
「そうなんです。日本語では「手」なのに、英語では「足」なんです。どう説明しますか?」
(かなりにやけている)
そいうと、ワトソン君はお土産のお菓子をくれて、出て行った。
彼はよくお土産をくれる。一番のお気に入りは、中国で買ってきてくれたこの黄色い人形だ。

どこかでみたことのある人形だが、未だに思い出せない(青かったような・・・)。
でも、「今」思い出す必要がある情報ではない。
シャーロックも次のように言っている。
“Now that I do know it I shall do my best to forget it.”
(もうそれについて知ったから、何とか忘れるようにしよう。)
シャーロックは頭を情報が置かれている「屋根裏部屋」だと言っている。
そして、大事なことは、屋根裏部屋に漫然と情報を置いていることではなく、
適切なタイミングで適切な情報を取り出せるように「整理」されているかだ。
今、このワトソン君の問題を解くために必要な情報は、Steven Pinkerの 「前方(front)問題」だ。
次の図で、ジョンの前にいる人物は誰だろうか?(Who is in front of John?)

お分かりだろうか。
正解は1~4の全員だ。 なぜか?
それは、「基準」が変われば「前方」も変わるからだ。
・ジョン(が向いている方)を基準にすれば、ジョンの前にいるのは1の人物になる。
・横の列の先頭を基準にすれば、ジョンの前にいるのは2の人物になる。
(この場合、ジョンの背後にいる人が、ジョンの前になれるわけだ)
・縦の列(十字架が前)を基準にすれば、ジョンの前にいるのは3の人物になる。
・話し手 (speaker)を基準にすれば、ジョンの前にいるのは4の人物になる。
つまり、空間における「前後」は相対的なものであり、何を基準にするかで変わる。
もうお分かりかだろう。
何を基準にするかで、「始め」も変わる。
例えば、一歩踏み出す場合、下(地面)が基準になるため、「足」が先頭になる。
この場合、「足を出す」ことが「開始」になる。
ちなみに、『英辞郎』に "get one's feet wet"の語源が次のように書かれている。
get one's feet wet
◆【語源】海で泳ぐのを怖がる子どもに向かって、とにかく「足だけでもいいから水につけてみなさい」と助言するところから。
つまり、「下」が基準になっているから、この場合は「足」が「前」になる。
get one's feet wetは日本語でいえば「一歩、踏み出す」になるのだろう。
実際、英語でも「何かをやってみる」という意味で try one’s hand (at~)という言い方もある。
まさに「手(hand)を染める」ということだ。
前後関係は相対的なのだ。
よって、手が先にも、足が先にもなれる。

ワトソン君はいつもいい問題提起をしてくれる。
もう少し、この問題について考察を進めてみよう。
(to be continued)
ロペ問題: なぜ、「手を染める」のに、「足を洗う」のか?
仮説: 手はstartを表し、足はgoalを表す
この「ロペ問題」の考察をさらに続けていたところ、研究室にワトソン君がやってきた。
彼のフルネームは「ルネ・ワトソン」である(エマ・ワトソンではない)。
「スケロック先生、英語では逆ですよ」(少しにやけている)
「というと・・・?」
「「手を染める」を英語で調べてみたら、"get one's feet wet" と出てきました。
つまり、英語では「足(feet)を濡らす」ことが「始まり」を意味します。」 (少しドヤ顔)
「日英で、ある意味「反対」なんだね」
「そうなんです。日本語では「手」なのに、英語では「足」なんです。どう説明しますか?」
(かなりにやけている)
そいうと、ワトソン君はお土産のお菓子をくれて、出て行った。
彼はよくお土産をくれる。一番のお気に入りは、中国で買ってきてくれたこの黄色い人形だ。
どこかでみたことのある人形だが、未だに思い出せない(青かったような・・・)。
でも、「今」思い出す必要がある情報ではない。
シャーロックも次のように言っている。
“Now that I do know it I shall do my best to forget it.”
(もうそれについて知ったから、何とか忘れるようにしよう。)
シャーロックは頭を情報が置かれている「屋根裏部屋」だと言っている。
そして、大事なことは、屋根裏部屋に漫然と情報を置いていることではなく、
適切なタイミングで適切な情報を取り出せるように「整理」されているかだ。
今、このワトソン君の問題を解くために必要な情報は、Steven Pinkerの 「前方(front)問題」だ。
次の図で、ジョンの前にいる人物は誰だろうか?(Who is in front of John?)

お分かりだろうか。
正解は1~4の全員だ。 なぜか?
それは、「基準」が変われば「前方」も変わるからだ。
・ジョン(が向いている方)を基準にすれば、ジョンの前にいるのは1の人物になる。
・横の列の先頭を基準にすれば、ジョンの前にいるのは2の人物になる。
(この場合、ジョンの背後にいる人が、ジョンの前になれるわけだ)
・縦の列(十字架が前)を基準にすれば、ジョンの前にいるのは3の人物になる。
・話し手 (speaker)を基準にすれば、ジョンの前にいるのは4の人物になる。
つまり、空間における「前後」は相対的なものであり、何を基準にするかで変わる。
もうお分かりかだろう。
何を基準にするかで、「始め」も変わる。
例えば、一歩踏み出す場合、下(地面)が基準になるため、「足」が先頭になる。
この場合、「足を出す」ことが「開始」になる。
ちなみに、『英辞郎』に "get one's feet wet"の語源が次のように書かれている。
get one's feet wet
◆【語源】海で泳ぐのを怖がる子どもに向かって、とにかく「足だけでもいいから水につけてみなさい」と助言するところから。
つまり、「下」が基準になっているから、この場合は「足」が「前」になる。
get one's feet wetは日本語でいえば「一歩、踏み出す」になるのだろう。
実際、英語でも「何かをやってみる」という意味で try one’s hand (at~)という言い方もある。
まさに「手(hand)を染める」ということだ。
前後関係は相対的なのだ。
よって、手が先にも、足が先にもなれる。
ワトソン君はいつもいい問題提起をしてくれる。
もう少し、この問題について考察を進めてみよう。
(to be continued)