The valley of ear (ch. 7)

英語は音の脱落 (リダクション)を起こしやすい
・子音が連続する場合に音が消える
・語尾の子音は消えやすい
(* 母音: 「あ(a)、い(i)、う(u)、え(e)、お(o)」/子音:それ以外)

The valley of ear (ch. 7)



7. Queen (Fun it)

これまで、この The valley of earの章では「空耳」がどのように起こるかを「音変化」という点から見てきた。

今回はもう一歩踏み込んで、なぜ「空耳」が起こるかについてみていこう。

この謎には2つの点が関係している。

① 空耳は脳が音を「勝手に補ったり、変えたりしている」ために起こる

次の文を見てみよう。

The valley of ear (ch. 7)


実は上の文は語句の綴りがめちゃくちゃである。

たとえば、下から2行目では「ひかたまとり」と書かれているが、「ひとかたまり」となんとなく読めてしまう

 「ひかたまとり」 (誤)-「ひとかたまり」 (正)

この研究には批判的な意見もあるものの、「かたまりで捉える」というのは、あながち間違いではないようである。
(この点については、The hound of the books & movies (Frozen)も参照 )

同じことが「空耳」でも起きているといえる。

1個1個の音を聞いているのではなく、音を「かたまり」で捉えている
そのため、英語と日本語で音が似ている表現がある場合、脳が勝手に「音を補ったり、変えたりして」馴染みのある日本語の表現として解釈する。

つまり、空耳というのは脳で起こっているともいえる。
(この点に関しては、The valley of ear (ch. 6) も参照)


② マガーク効果

実は、音は耳だけでは聞いていない。

目でも「聞いている」のである。

このことは実験で確かめられている。

The valley of ear (ch. 7)


このように、「ガ」と言っている人の映像を使って「バ」の音を流したら、「バ」に聞こえなくなる。

まさに、人間は耳(聴覚)だけでなく目(視覚)でも音を「聞いて」いるのである。

空耳の映像では、日本語に聞こえる英語の部分が「日本語」で書かれる。
そのため、視覚からも「文字」として情報を受け取る。
つまり、目でも「聴いている」ため、「空耳」が起こるのである。

まとめると次のようになる。

The valley of ear (ch. 7)

そのため、このような「空耳」が可能になる (Queen のFun itより)。

The valley of ear (ch. 7)


time tonightではリダクションが2か所で起こっている
・timeの発音は「タイm」であるが、最後の子音mが落ちる
・tonightの発音は「トゥナイt」であるが、最後の子音tが落ちる

The valley of ear (ch. 7)

このようにtime tonightは「タイトゥナイ」と発音されるが、この音は日本語の「食べてない」と似ている。

The valley of ear (ch. 7)

「イトゥ」の部分を脳が勝手に「加工」を加え「ベテ」としているために「空耳」として聞こえる。


実際に確かめてみたい人はこちら ↓

https://www.amazon.co.jp/clouddrive/share/KTd1qF2Vp1wj6wlnHZBbBCXz81op1ahW2EIinlVOSbj

(*なお、「食べてない」という文字があるため、マガーク効果により「食べてない」と聞こえるが、文字を見ないで聞いてもらうと、time tonight (タイトゥナイ)に聞こえるはずである。)

≪補足映像資料≫

1.マガーク効果の実験映像
2.本家の作品(Slipknotの「The Blister Exists」)。
(この作品はマガーク効果がかなり大きい。日本語を見ないで聞いてもらえると英語に聞こえるはず。ぜひ、当ててもらいたい。)

The valley of ear (ch. 7)


なお、timeの発音は [taim]であり、最後のeは発音しない。
このように最後に置かれた発音しないeは「マジックe」とよばれる

この「マジックe」に関しては改めて扱うことにする。

(to be continued)


**** <補足コメント>*****

空耳サークルの作品は「本家(タモリ倶楽部)」で採用されているが、すべて手ぬぐいである。

The valley of ear (ch. 7)


「空耳」でジャンパー(一番高い評価)を取るのは、ある意味、宇宙飛行士になるくらい難しい。

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コンサルタント言語探偵 (自称)

我々が言葉を用いるときに、暗黙のうちに、何らかの規則に従っていることは明らかである。しかし、一体どんな規則に従っているのであろうか?たとえば、
「人の悪口は言わない!」の「人」は「他人」のことである(=「他人」の悪口は言わない!)
「人の悪口を言うな!」の「人」は「自分」のことを指せる(=「俺」の悪口を言うな!)

なぜ、「人」が「他人」も「自分」も指せるのかを説明することは難しいが、日本人ならいとも簡単に使える。

規則をはっきり意識できない、説明できないのに使える。

ここに「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」が存在する。

言語は面白い。そのなぞ解きはさらに面白い。

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誰に頼まれることがなくても、言語の謎を解明し続けるが、依頼はいつでも受け付けている。

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