The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)

ルー大柴さんの「ルー語録」は面白い。

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)

日本語の一部だけを英語に「直訳」するパターンであるが、その直訳された英語との「アンバランスさ」が面白さを出している。

自分のお気に入りは、これだ。

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)

今回は、この「ルー語録」から、言葉における「人/モノ」と「場所」の関係を取り上げる。


3. Person/thing-place alternation

「ルー語録」は面白いだけでなく、「やわらかい言い方」にもなりうる。

たとえば、「『身を粉にして』頑張ってんだぞ」というと、自分の努力をアピールしている自慢気な感じになってしまうが、
「『身をパウダーにして』頑張ってんだぞ」というと、自慢気な感じがしないで自分の頑張りをアピールできる(かもしれない)。

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)

また、人を叱る場合もダイレクトに「いい加減にしろ!」というよりも、
いい加減にホワイト!」という方が、相手の気持ちも和らぎ、注意を聞こうと思ってもらえる(かもしれない)。

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)

人は感情の生き物であるので、このような「ルー語録」を会話の「潤滑油」にしてみるのもありだろう。


ちなみに、「ルー語録」が載っているサイトはこちら ↓

https://iso-labo.com/labo/words_of_lou-Oshiba.html


独自の「ルー語録」を作るのも面白いし、「ルー語録」で単語を覚えるもの有意味学習になっていいだろう。
(有意味学習に関してはThe hound of the books & movies (Pun words)の「コメント」欄を参照)


≪覚え書きメモ≫

「直接性をぼかす」ことで言葉に「丁寧さ」が出ることはよくある。

・「誰 (ヒト)」の代わりに「どちら (トコロ=場所)」を使うと丁寧になる。

「誰ですか?」→「どちら様ですか?」(より丁寧)

・「それ (モノ)」の代わりに「そこ (トコロ=場所)」を使うとやんわり頼んでいる感じが出て、丁寧な依頼になる。

「それを何とかやって欲しい」→「そこを何とかやって欲しい」(より丁寧)

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)


このような「ヒト/モノ」の場所化に関しては、日英語で面白い対比を見せる。
具体的にいうと、英語は「モノ」的な捉え方をするところで、日本語は「トコロ」的な捉え方をする

(1) What is the next station? [英語:what =モノ]
(2) 次の駅はどこですか?          [日本語:どこ=トコロ(場所)]

上の例にあるように、「次の駅」を尋ねる場合、英語はモノを尋ねる「what (何)」を使うが、日本語はトコロ (場所)を尋ねる「どこ」を使う

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)

もし、(1)でwhereを使うと、道に迷ってしまって「次の駅がどこかわからない」状況を表すことになる。

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)


さらに、人を指す代名詞に関しても、日英語で違いがある

(i) これはブラウン先生です。 [これ=モノ]
(ii) こちらはブラウン先生です。 [こちら=トコロ]

日本語ではヒトに対して(i)のようにモノを指す「これ」を使うのは失礼であり、トコロ(場所)を指す「こちら」を使う

一方、英語のthisはヒトもモノも両方指せる

(iii) This is Ms. Brown. [ヒト]
(iv) This is your desk. [モノ]

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)


しかし、次の例では日英語ともにモノ的な捉え方が可能である。

(v) That is my father.
(vi) あれは私の父です。

この場合はトコロ(場所)を指す「あちら」を使うと不自然である。

(vii) あちらは私の父です。 [不自然]

The memoranda of Sukelock Holmes (No. 3)

なぜ、(i)は失礼なのに(vi)は失礼でないのだろうか?

このような言葉におけるヒトやモノの場所化は興味深いテーマである。

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プロフィール
スケロック・ホームズ
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コンサルタント言語探偵 (自称)

我々が言葉を用いるときに、暗黙のうちに、何らかの規則に従っていることは明らかである。しかし、一体どんな規則に従っているのであろうか?たとえば、
「人の悪口は言わない!」の「人」は「他人」のことである(=「他人」の悪口は言わない!)
「人の悪口を言うな!」の「人」は「自分」のことを指せる(=「俺」の悪口を言うな!)

なぜ、「人」が「他人」も「自分」も指せるのかを説明することは難しいが、日本人ならいとも簡単に使える。

規則をはっきり意識できない、説明できないのに使える。

ここに「ヴィトゲンシュタインのパラドックス」が存在する。

言語は面白い。そのなぞ解きはさらに面白い。

The only promise a puzzle makes is an answer.

誰に頼まれることがなくても、言語の謎を解明し続けるが、依頼はいつでも受け付けている。

There's nothing more hazardous to my health than boredom.