The valley of ear (ch. 7)

スケロック・ホームズ

2019年04月14日 17:07

英語は音の脱落 (リダクション)を起こしやすい
・子音が連続する場合に音が消える
・語尾の子音は消えやすい
(* 母音: 「あ(a)、い(i)、う(u)、え(e)、お(o)」/子音:それ以外)





7. Queen (Fun it)

これまで、この The valley of earの章では「空耳」がどのように起こるかを「音変化」という点から見てきた。

今回はもう一歩踏み込んで、なぜ「空耳」が起こるかについてみていこう。

この謎には2つの点が関係している。

① 空耳は脳が音を「勝手に補ったり、変えたりしている」ために起こる

次の文を見てみよう。




実は上の文は語句の綴りがめちゃくちゃである。

たとえば、下から2行目では「ひかたまとり」と書かれているが、「ひとかたまり」となんとなく読めてしまう

 「ひかたまとり」 (誤)-「ひとかたまり」 (正)

この研究には批判的な意見もあるものの、「かたまりで捉える」というのは、あながち間違いではないようである。
(この点については、The hound of the books & movies (Frozen)も参照 )

同じことが「空耳」でも起きているといえる。

1個1個の音を聞いているのではなく、音を「かたまり」で捉えている
そのため、英語と日本語で音が似ている表現がある場合、脳が勝手に「音を補ったり、変えたりして」馴染みのある日本語の表現として解釈する。

つまり、空耳というのは脳で起こっているともいえる。
(この点に関しては、The valley of ear (ch. 6) も参照)


② マガーク効果

実は、音は耳だけでは聞いていない。

目でも「聞いている」のである。

このことは実験で確かめられている。




このように、「ガ」と言っている人の映像を使って「バ」の音を流したら、「バ」に聞こえなくなる。

まさに、人間は耳(聴覚)だけでなく目(視覚)でも音を「聞いて」いるのである。

空耳の映像では、日本語に聞こえる英語の部分が「日本語」で書かれる。
そのため、視覚からも「文字」として情報を受け取る。
つまり、目でも「聴いている」ため、「空耳」が起こるのである。

まとめると次のようになる。



そのため、このような「空耳」が可能になる (Queen のFun itより)。




time tonightではリダクションが2か所で起こっている
・timeの発音は「タイm」であるが、最後の子音mが落ちる
・tonightの発音は「トゥナイt」であるが、最後の子音tが落ちる



このようにtime tonightは「タイトゥナイ」と発音されるが、この音は日本語の「食べてない」と似ている。



「イトゥ」の部分を脳が勝手に「加工」を加え「ベテ」としているために「空耳」として聞こえる。


実際に確かめてみたい人はこちら ↓

https://www.amazon.co.jp/clouddrive/share/KTd1qF2Vp1wj6wlnHZBbBCXz81op1ahW2EIinlVOSbj

(*なお、「食べてない」という文字があるため、マガーク効果により「食べてない」と聞こえるが、文字を見ないで聞いてもらうと、time tonight (タイトゥナイ)に聞こえるはずである。)

≪補足映像資料≫

1.マガーク効果の実験映像
2.本家の作品(Slipknotの「The Blister Exists」)。
(この作品はマガーク効果がかなり大きい。日本語を見ないで聞いてもらえると英語に聞こえるはず。ぜひ、当ててもらいたい。)




なお、timeの発音は [taim]であり、最後のeは発音しない。
このように最後に置かれた発音しないeは「マジックe」とよばれる

この「マジックe」に関しては改めて扱うことにする。

(to be continued)


**** <補足コメント>*****

空耳サークルの作品は「本家(タモリ倶楽部)」で採用されているが、すべて手ぬぐいである。




「空耳」でジャンパー(一番高い評価)を取るのは、ある意味、宇宙飛行士になるくらい難しい。

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