8. Adjective & adverb
21世紀最大の英文法書といえば、HuddlestonとPullumが書いた
The Cambridge Grammar of the English Language (
CGEL)である。
内容もさることながら、サイズも規格外で総ページ数1800ページを超える。
本の厚さは「リバイ兵長以上、カールおじさん未満」というビッグサイズである。
実は、この英文法書の翻訳版がシリーズ化されて出ている。
「大きい」本なので、日本では細分化して出すことになった。
「名詞と名詞句」が今月刊行されるが、来年の東京オリンピックまでに残りの4巻が刊行され、すべてが揃う予定である。
自分は「形容詞と副詞」の翻訳を担当した。
形容詞と副詞は日本の文法書では、それほどしっかり扱われないので、翻訳しながら非常に「勉強」になった。
面白いと思った現象の1つに、形容詞の
代換法 (hypallage)がある。
a beautiful photoとa nude photoの違いは分かるだろうか?
a beautiful photo と a nude photoは
形容詞のbeautifulとnodeの用いられ方が異なる。
このような形容詞を
転移修飾語(transferred epithet)といい、このような形容詞の使われ方を代換法という。
ほかにも、次のような例がある。
とくに、「
くつろいだ一杯のお茶」という意味で、
quietをa cup of teaに入れ込めるのは驚きである。
この本を読めば、形容詞および副詞の奥深さが分かるだろう。
“Education is a progressive discovery of our own ignorance.” (Will Durant)
(勉強することとは自分の無知を徐々に発見していくことである。-ウィル・デュラント-)
カッコよくまとめたが、要は「番宣(本の宣伝)」であった・・・
(翻訳はかなり大変な上に、「訳のダメ出しはあっても、訳がうまいとほめられることはない」過酷な作業なので、宣伝させて!)
****「大から小の日本語」と「小から大の英語」 ****
今回、「大きな」英文法書のCGELを、翻訳版では細かくシリーズ化して出している。
筋トレにもなるサイズでよく出すなぁと思うが、ここには日英の「捉え方」が反映されている。
たとえば、
日付の書き方を見てみよう。
(『数字とことばの不思議な話』 窪園晴夫 著より)
・日本式:大きな年号から日月を細かく分けていく
・英語式:小さな日月を「束ねて」大きな年号でくくる
同様なことが
住所の書き方にも見られる。
・日本式:国や県という大きな単位を市や町という小さな単位に細分化する
・英語式:市や町という小さな単位を束ねて大きな県や国でまとめる
そして、この考えは
本の作りにも反映されている。
・日本式:全体(大きなもの)を細分化してシリーズ本(小さい単位)にする
・英語式:小さな節や章を束ねて1つの大きな本に仕上げる
いろんなところで、モノの見方・捉え方が反映されているのである。