The adventures of Sukelock Holmes (CGEL )

スケロック・ホームズ

2019年11月05日 20:54

8. Adjective & adverb

21世紀最大の英文法書といえば、HuddlestonとPullumが書いたThe Cambridge Grammar of the English Language (CGEL)である。

内容もさることながら、サイズも規格外で総ページ数1800ページを超える。



本の厚さは「リバイ兵長以上、カールおじさん未満」というビッグサイズである。

実は、この英文法書の翻訳版がシリーズ化されて出ている。



「大きい」本なので、日本では細分化して出すことになった。

「名詞と名詞句」が今月刊行されるが、来年の東京オリンピックまでに残りの4巻が刊行され、すべてが揃う予定である。



自分は「形容詞と副詞」の翻訳を担当した。

形容詞と副詞は日本の文法書では、それほどしっかり扱われないので、翻訳しながら非常に「勉強」になった。

面白いと思った現象の1つに、形容詞の代換法 (hypallage)がある。

a beautiful photoとa nude photoの違いは分かるだろうか?



a beautiful photo と a nude photoは形容詞のbeautifulとnodeの用いられ方が異なる



このような形容詞を転移修飾語(transferred epithet)といい、このような形容詞の使われ方を代換法という。

ほかにも、次のような例がある。





とくに、「くつろいだ一杯のお茶」という意味で、quietをa cup of teaに入れ込めるのは驚きである。



この本を読めば、形容詞および副詞の奥深さが分かるだろう。

“Education is a progressive discovery of our own ignorance.” (Will Durant)
(勉強することとは自分の無知を徐々に発見していくことである。-ウィル・デュラント-)

カッコよくまとめたが、要は「番宣(本の宣伝)」であった・・・
(翻訳はかなり大変な上に、「訳のダメ出しはあっても、訳がうまいとほめられることはない」過酷な作業なので、宣伝させて!)


****「大から小の日本語」と「小から大の英語」 ****

今回、「大きな」英文法書のCGELを、翻訳版では細かくシリーズ化して出している。

筋トレにもなるサイズでよく出すなぁと思うが、ここには日英の「捉え方」が反映されている。

たとえば、日付の書き方を見てみよう。
(『数字とことばの不思議な話』 窪園晴夫 著より)



・日本式:大きな年号から日月を細かく分けていく
・英語式:小さな日月を「束ねて」大きな年号でくくる



同様なことが住所の書き方にも見られる。





・日本式:国や県という大きな単位を市や町という小さな単位に細分化する
・英語式:市や町という小さな単位を束ねて大きな県や国でまとめる

そして、この考えは本の作りにも反映されている。

・日本式:全体(大きなもの)を細分化してシリーズ本(小さい単位)にする
・英語式:小さな節や章を束ねて1つの大きな本に仕上げる


いろんなところで、モノの見方・捉え方が反映されているのである。

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